ホワイトサドルの周辺は蕎麦畑や水田が広がり、山も青く煙ったよう。ちょうど蕎麦の花が咲いており、その隣の黄金の稲穂、さらに後ろに控える山々が晴天の空のもと輝いておりました。比較的東京から近いとはいえ、日本の原風景のような光景に出会うことができるのは嬉しい限りです。
私と妹が外乗に出かけると、地元の小学生くらいの女の子が犬の散歩途中で、馬の後をついてきました。先導のコーチは「あまり、馬に近づきすぎないでね。危ないから。」と声をかけます。女の子はしばらくついてきて、コーチは後ろを振り返りながら気にしていたのです。と、いきなり、「あっ、消えた!」「ええっ、そんなことはないんじゃない。ちょうどカーブだったし、引き返したのでは?」「そうよね。消える訳がないわよね。」
しかし、そう思われてもおかしくないような林の道。そんなミステリアスな雰囲気も持つ、外乗には楽しいコースでした。
そして、我々が戻って来ると、甥っ子たちはテレビで放映されたというホワイトサドルのビデオをワイワイ言いながら見ていたのでした。都会の犬と田舎の犬が交換して、それぞれの暮らしを体験するという番組でした。私も途中から拝見しましたが、目の前にいるボスや奥様、やんちゃなホワイトサドルの犬がテレビに登場しており、なかなか楽しめました。都会から来たお嬢様犬は馬が恐いとか、ホワイトサドルの犬が都会で綺麗にシャンプーされお坊ちゃん犬にとか、こういう番組、また放映してほしいな。
◆12月15日
12月ともなると外乗はかなり寒い。林の中の日陰のところは、冷蔵庫の中にいるようで、日向が恋しくなります。秋に黄金色に実っていた田んぼは枯れ色で、すっかり冬景色。都会ではめったに見ることができなくなった霜柱があちこちに立ち、日向の土はぐずぐず緩んでいても、溜まっていた水は凍っています。石ころの表面も凍って白くなっているので、馬を誘導するのに注意が必要です。暖かい馬場で、『ン、今までとは違う感触がするぞ』という印象を持っていたので、外乗ではなく、さらに馬場で練習した方がよかったかと少し後悔しました。
外乗に出かけるときに、ボスから「速歩のときに鐙を脱いでみて。」と声をかけられましたが、果たしてそんな芸当ができるのか。3回目ぐらいの速歩で、やっとトライする気になりました。ハハ、やればできる。お尻はボコボコ跳ねているけれど。鐙に足をかけ、膝と足首の屈伸を使うと正反動が楽なこと。この感じ、だんだんわかってきたぞ。
先導のコーチが「ジョギング〜」というと速歩になります。正反動が苦痛でなくなって来ると、ただ常歩で歩いているだけが物足りなくなります。もっと、「ジョギング〜」といってほしいくらい、と考えつつ帰りの道を歩いているときにふと気づきました。馬は足を、右、左、右、左と前に出して動いています。乗っている私の鐙も、それに連れて右、左、右、左と交互に軽く動いているのです。当然といえば当然なのですが、この感覚は今まで感じたことはありませんでした。膝から下の足の動きが軽くなってきたので、常歩でもそれを感じるようになったのです。コーチ曰く、「その感覚は大事にした方がいいですよ。」
何事も、今まで知らなかった世界が開けてくるのは感動です。ここに来ると、他のクラブの倍以上は上達が速い。